あんず

パリタクシーのあんずのレビュー・感想・評価

パリタクシー(2022年製作の映画)
4.5
『オットーという男』とテーマも心地好い感動も観終えた後の清々しさも似ていて、素晴らしかった。私のすごく好きなタイプの作品。

オットーのように、最初は仕事もプライベートも問題アリで不機嫌極まりないタクシー運転手のシャルルが、92歳のマドレーヌ婦人を乗せることで、徐々に表情が和らぎ、心を開いて自分のことも語り出す。笑顔さえ見られるようになった。

一方のマドレーヌは、自宅の屋敷を引き払い、施設に入るという。目的地に向かってパリの町を巡り、エッフェル塔や凱旋門など名所が映り、観光気分を味わえて楽しい。しかし、マドレーヌが辿る場所はそれだけではない。個人的な思い出の場所へも寄り、自分の過去を赤裸々に話すが、チャーミングで上品な見た目とは裏腹に壮絶な過去が明らかになって行く。

パリをタクシーで観光した気分を味わいたい♪なんていう気軽な気分で観に来てしまった私は、後に引き返せず焦ったけれど、だからこそ作品に深みが出て味わい深く、人生は捨てたもんじゃないのかもと思わせてくれる。

時々自分が顎を上げて上を見ているように映される空の映像や音楽がまた素晴らしくて、エンディングもロマンチックで、90分と短い割に満足感がスゴかった。

92歳を演じたリーヌ・ルノーは今年95歳になると知ってビックリ。パリジェンヌはやっぱり永遠の憧れだ。
あんず

あんず