Jun潤

アバター:ジェームズ・キャメロン3DリマスターのJun潤のレビュー・感想・評価

5.0
2022.10.06

続編予習のため鑑賞。
2009年に公開され、美しい映像美と世界観によって、同じジェームズ・キャメロン監督の『タイタニック』の記録を破り世界歴代興行収入第一位の座に着いた言わずと知れた名作。
一度は『アベンジャーズ エンドゲーム』にその座を明け渡したものの、中国での公開を機に返り咲き。
13年ぶりの続編公開に向け、新たに映像を追加し、進化した3D技術を駆使したリマスター版がリバイバル上映。
今回はグランドシネマサンシャイン、シアター12のバカでかスクリーンでその世界観と映像にどっぷり浸かってきます。

地球からはるか遠く離れた惑星“パンドラ”。
そこでは現地民である“ナディ”と、彼らから“スカイピープル”と呼ばれている、“パンドラ”の地下資源を求める地球人との、長きに渡る対話と対立が繰り広げられていた。
“パンドラ”に、優秀な科学者であったが強盗に撃たれ亡くなった兄の代わりに、脊髄の損傷によって歩けなくなった退役軍人のジェイク・サリーが訪れる。
地球と異なる大気の“パンドラ”での任務を可能にするため、“ナディ”の容姿に似せて地球人のDNAと混合して作られた「アバター」に精神をリンクさせ、一度失ったはずの脚を取り戻したジェイクは“パンドラ”の大地を駆ける。
最初の任務の日、現地生物を不用意に刺激してしまい,仲間とはぐれた先でジェイクは、“ナディ”“オマティカヤ族”のネイティリと出会い、“ナディ”の情報を探るために集落とされているホームツリーでの暮らしに身を投じる。
徐々に惹かれ合っていくジェイクとネイティリ、しかし異種族間の愛は、悲しき戦争の渦に巻き込まれていくこととなる。

いやー、これは世界観の大勝利。
公開から少し経った頃には、個人的に物語そのものよりも、当時革新的だった3D技術を大胆かつ前衛的に使った映像が評価されたものとばかり思っていましたが、ところがどっこいこの完成され尽くした世界観よ。
眼球を、脳みそを、心の奥底を掴まれて離れることができなくなってしまった。
例えるならばスティーブン・スピルバーグ『ジュラシック・パーク』『E.T.』、マーベルスタジオが推し進めるMCU、宮崎駿によるジブリ作品のように、現実とは全く異なる一つの世界を映像の中に創り出し、時代を変えてしまうほどの衝撃を与える、異色作であり意欲作でもある、それでいて斬新かつ王道。

映像については、やはり作品公開が13年も前ということで、最近のIMAX技術に比べると奥行きの浅さが気になりましたが、当時見た他の3D映画を思い出して比べてみても完成度は圧倒的に高い、高すぎる、オーバーテクノロジーだったんじゃないか??
神秘的で美麗な背景描写にも目を奪われましたが、それすらも作品のメリハリの内のメリでしかなく、後半の戦争シーンにおいては全く正反対の、燃え上がるホームツリーの荒々しい描写でもってハリを持ってくるのは、テンション最高潮の状態を維持したまま高水準の映像美の中でさらに緩急をつけてくる構成の粋さが伝わってきました。

そしてなんといっても世界観。
“パンドラ”という惑星、その星に住む生物、生えている植物、そして生活を営む“ナディ”という、地球人から見たらエイリアン、“ナディ”から見たら地球人の方がエイリアン。
彼らが独自の言語、信仰、文化を持ち、生命としての歴史を紡いでいる。
序盤は異形のものに見えた彼らも、描写を重ねに重ね、終盤に凄惨な戦争に巻き込まれ大切な人を失い涙を流す姿には感情移入をしてしまうほど。
これほどの世界観を一つの作品のみで創り上げてしまうジェームズ・キャメロン監督の手腕にただただ脱帽。

さらには人間パートと“パンドラ”パートの対比。
これについては、ジェイクが元軍人として任務に従事していく中で、ネイティリと出会い、“オマティカヤ族”での生活の中で変化していく中で心情に変化が訪れていく様がとても自然な流れで描かれていました。
戦争シーンの中では、先住民を蹂躙する地球人に対抗する“パンドラ”の、虚しい抵抗をし続けた先で神への祈りが通じたことによる逆転を描かれていました。
そしてその逆転を含んだ流れのその先で、機械化された戦争に対する原住民の原始的な戦闘によって一方的でないちゃんとした戦争を描ききることで、自然への敬意と畏怖を感じさせる深いメッセージを感じました。

また、その他の、ジェイクが“オマティカヤ族”のハンターとして、1人の男として認められていくサクセスストーリー、ジェイクとネイティリとの禁断のラブストーリー、さらには原住民の信仰を背景に人間と自然との共存について、劇中では一言のセリフだけで片付けられていましたが、今後の地球環境についての警鐘まで入れてくるという、特盛も特盛の要素&テーマの豪華贅沢三昧セット。
しかもそれでいて、全て“パンドラ”の“ナディ”という確立された一個の別世界を軸に描かれているものだから、渋滞したり未回収になったりすることなく全て活かしきっているのだから恐ろしい。

公開から13年、干支一周ちょい。
長く感じますがそれでも映画の歴史の中で言えば、今作を起点に映像が進化の道を辿る真っ只中。
13年ぶりに再始動する『アバター』シリーズや、スクリーンの中に別世界を創り続けるクリエイターたちの手によって、映画界に革命が起こる瞬間をこの目に焼き付け続けなければ。
Jun潤

Jun潤