皮肉や偏見、信条や押し付け。
ヴィーガンへの圧力映画と思いきや、完全にブラックコメディとしてシュールな笑いに振り切ったカニバリズムものだったw
テンポがめっちゃ良い上、短尺なので相当気軽に観る事が出来るが、終始やってる事はエグいし、ちゃんと殺しや解体シーンも鮮明に描かれているので、食事中とかに観るのは余程のマニアだな(汗)
経営難からなる絶賛倦怠期夫婦。
そこへ更に追い討ちをかけるかの如くヴィーガン過激派からの自営肉店への悪質な嫌がらせ(襲撃)。
酔いや鬱憤の溜まり加減に正気を失った夫がひょんな事で店を襲ったヴィーガンを殺めてしまう。
処理に困った夫婦が取った手段とは!!
とまぁ、そんなプロローグなんて対して重要ではないし、言うほど重たくてサスペンス的なテイストはゼロと言って良いくらい全編にわたって繰り広げられるのはシュールなブラックコントの連続。
途中、あらゆる野生の肉食動物たちが草食動物たちをハントする映像と合わせて夫婦の“人狩り”を交互に映すシーンがクッソ面白くて声に出して笑ってもーた。
セリフの一つ一つのワードセンスが非常に良くて面白いのも、この作品が他の低予算ブラックコメディよりも一段上を行く要素かと。
例えば、
娘の彼氏がヴィーガンで、薦められたワインにすら
「破砕の際に虫が入るのでヴィーガンワインしか飲めません」とクソみたいな理屈を父親に吐いた後、
“言わば、シャトー・アウシュビッツです”
と真顔で揶揄してみたり。
人肉ハム豚の原産地を客に聞かれて、咄嗟に“イラン豚です”などとシャレにならないブラックジョークで乗り切る信仰心への挑戦状とも言えるワードセンス。
とかとか
まだまだ数え切れないほどのギリギリ路線のブラックユーモアを連発してくる。
同業ライバル社の夫婦からのマウントトークも結構なトリガー的伏線になっているのも気が利いている。
雑食ではないヴィーガンに目をつけ、それをここまでのコメディ映画にしてしまうフランス映画の振り切り感、嫌いじゃないです。
ジャンルは違えど、【コーダ】より【エール】の方が個人的に断然好きな理由も、下ネタの振り切り方が遥かに初作の【エール】の方がイっちゃってたからだしww
とにかく徹底してアンモラルなので、こう言うシュールな笑いにクソ真面目な茶々や、道徳的見解を述べる時点で全く面白くない。
つまり、ちょっとでもモラルを気にするようなタイプの人は観るべきでは無いかと。
私はこういうシュールでギリギリな笑いを偏見なく共有できる人にだけに本作を薦めるかな。
コレって結構大事な感性よね。
“世界で1番美味い肉は?
神戸ビーフ?
なら神戸ヴィーガンを作る!”