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メトロポリスのmitakosamaのレビュー・感想・評価

メトロポリス(2001年製作の映画)
4.3
2000年代初頭に発表された事もあり、とても記念碑的な1本だと思う。
手塚アニメの集大成と言えば簡単だ。だがそれ以上に手塚という日本のアニメ文化の礎を築いた偉人の功績に対して、ある種の決着を付けるような作品だったのだと思う。

日本アニメの三大遺伝子、虫プロ・タツノコ・東映動画の一翼ではあるが、手塚自身はアニメ作家としては必ずしも作品に恵まれた訳では無いと思う。
手塚は希代のストーリーテラーだが、理想としたフルアニメを作れずリミテッドアニメの代名詞となってしまった。

この作品は、手塚が追い求めた理想を手塚の意思を継ぐ者たちが完成させた事に意味があるのだと思う。
監督のりんたろうは虫プロの演出家を経て、虫プロ的な省略とケレン味を特徴とした演出家。カムイの剣や幻魔大戦にもっともその色が強く出ている。

そんなりんたろうが満を持して作った映画だけあり、手塚を形成する全てが詰まっているような作品だと思う。
◎ロックやケン一くんを始め、レッド・ヒゲオヤジ・ノターリン・ブーン・スカンク・ランプ・ハムエッグなどのスターシステムのお約束。
◎初期ディズニーに憧れた手塚らしい、限りなくフルアニメに近いヌルヌル動く作画に、消防ロボなどのミュージカルテイスト。
◎メトロポリスの近未来描写と、地下街の貧民層とのシニカルな比較。
◎原作とはだいぶアレンジはされているが、手塚らしさを失わない人間の根源的な本質を問う脚本。

脚本に大友が入ってる。物語性が希薄な大友は最も相性が悪い印象もあったが、それでもロックの採用を提案したのは流石だなと思うわ。ロックが入る事でこの物語のテーマが明確になり、ケン一が傍観者でなくなったので大成功だね。
ヒゲオヤジがティマを探すシーンでサイバーパンクっぽくなるのは、ちょっと世界観に合わない気もしたが。

りんたろうの趣味でサントラにジャズが使われたのも凄い良い。
りんたろうにとっても集大成になった。手塚のアニメ界の影響は功・罪が共に語られるが、やはり今作には手塚に対する敬意に満ちている。

手塚が生きていたらこの映画をどう評したかね?誇りに思いつつ、最も嫉妬したかもしれない。
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