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福田村事件のzkty1006のレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.5
何のために生まれてきたのか。

このセリフがフィクションなのかノンフィクションなのかわからないけどそう言いながら殺されていく若者。この世の不条理と無念さが凝縮されている。そして、最後に瑛太が発した普遍の問いかけ。

この映画の中で通貫していたと感じた人間の「生」の、生きるという動物的なもの。理屈理性ではなくて動物的な不安とか欲求とか勘とか温もりとか。関東大震災の後の恐怖と不安につけ込んだ流言の威力。100年前の話だが今もSNS等で同様に見受けられる負の伝播力。今もそんなに変わらない風景。
そして権力による意図的な弾圧。あと「大義」があると人は一線を越える躊躇が薄まっていく。それは「正義」という概念の恐ろしい一面も感じた。
一方で、田中麗奈が美しく瑞々しい「生」の姿を体現していた。

この映画は特定の事件の特定の時代の話ではなくて、普遍的な人間の物語だと受け止めた。
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