Masato

シュヴァリエのMasatoのレビュー・感想・評価

シュヴァリエ(2022年製作の映画)
3.8

サーチライト作品。実在した中世フランスの黒人音楽家のジョゼフボローニュを描いた伝記ドラマ。

中世フランスの音楽家と聞いて苦手意識を持つ人もいると思うが(自分だけ?)、根底は黒人差別をテーマとした物語であり、中世のフランス革命と現代におけるBLMが重ね合わせて描かれていた。昔を描いているのに今を描いているような気にさせられるメタファーに富んだ素晴らしい映画。

なぜ人は自由のために革命をしなければならないのか。というのを確信を持って描かれている。「選択の自由がないと思い込んでしまう。でも選択の自由は誰からも奪えない。だから私は闘うことを選んだ」という母親のセリフが印象的だった。白人優位社会で裕福な暮らしをしていても、本当の自由がなければ白人によって恩恵を受けているだけのペットにすぎない。故に白人が不利になれば、そのたびにチャンスを奪われていく。だからこそ自分が自分として生きられるように自由が必要であり、そのためには現状を打破する革命が必要なんだと訴えている。

やはりこれはBLMに通ずる問題で、アメリカにおける白人優位社会を壊さない限り悲劇は終わることはないという問題意識から起きた運動だったわけで、本作の物語はかなり現代と重なる。差別が当たり前の社会で生きていたり、ジョゼフのように自由を与えられてしまうと、自分で選択の自由を奪ってしまっていることがある。そのことに気付けるかが大切なんだなと思わされた。

また黒人差別の問題だけではなく、サマラ・ウィーヴィング演じるジョセフィーヌを通して男性優位社会とも重ね合わせられているところも良かった。夫から抑圧を受けて自由を失っていて、本来やりたいはずの歌手もできない彼女もまた、ジョゼフと同じく自由を奪われている立場。


サマラかわゆす
Masato

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