Masato

ネクスト・ゴール・ウィンズのMasatoのレビュー・感想・評価

3.8

タイカ・ワイティティ監督作。本国では評判が芳しくなかったが、十分に素晴らしい映画だった。プロットは王道ではあるものの、あらゆるところにスポ根の固定概念を破る要素があり、それがヒューマンドラマにも活きていて良かった。キャラの個性は監督らしく愛らしく、特にトランス女性のジャイヤのキャラがとにかく良かった。

ロンゲン監督が白人の救世主様として描かれないことはタイカ監督なので言うまでもなく。逆にキリストと露骨に重ね合わせたりして皮肉っているところがちゃんと現代的。テーマもサモアの人々から驕りの自省と幸せとはなんたるかを学ぶというものでそこも良かった。叩き上げて勝つことだけがサッカーの全てではない。その国の人々の精神性を尊重し、それぞれの思うがままに楽しく生きてこそサッカーができるというのは良かった。スポ根というよりも、異文化に触れ相手を尊重することを描いた映画。

ファスベンダーの好演はもちろんのこと、チームのみんなも最高だった。特にファファフィネもといトランス女性のジャイヤ。なんと実在の人物でFIFA初のトランス女性の選手。ファファフィネという文化というのがサモアの人間性を象徴しているかのような、我々の国たちのようにフォビアにはならず常に変化に柔軟で理解者である風土が良い。オネエキャラのような消費はされず、純粋にトランス女性としてのキャラで良かった。男性チームでサッカーをするうえでの苦悩も描かれていて良い。

ゆるゆるのオフビートなので全編に若干の弛みはあるものの、よくできた良い映画だった。
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