キヨ

ヒトラーのための虐殺会議のキヨのネタバレレビュー・内容・結末

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

ヴァンゼー湖畔の邸宅で行われる会議。
その会議の内容は、「ユダヤ人問題の最終解決」=ヨーロッパ全土のユダヤ人の抹消であった。会議はただひたすら進み続けるのみであった。


ただただ、ビジネス会議。話している内容は、到底許されることではないが、本当に全員が「ただの」ビジネス会議をしている。
事前の根回し、会議前のアイスブレイク、各派閥の保身、自身の施行した施策に対する執着、議事録に残すべきこと残さないことの取捨選択。
完全にビジネス会議のそれで、見ているうちに、自身もこの会議に参加している気分に本当になった。
会議は「うまく」まとまり、静かに終わる。
そこで、自身もこの会議から戻ってくるのだけれど、今までこの会議に自身が参加していたことに気が付いてぞっとした。淡々と、本当に淡々と「仕事」の話をしている。そこに対象となる人間の実像は見えなくて、仕事として対処すべき事項としてしか人間を見ていない。だから、参加者全員業務として対処をするだけ。そんな一員に自分もなっている。国内の雰囲気が、「そういう」論調に傾いたとき、本当に自分は非難の声を上げることができるのか、自身を犠牲にしてまで抵抗できるのか、人を殺せと大きなものから責め立てられて抵抗し続けることができるのか。絶対反対、抵抗できるとは言い切れないなと思った。

映画館の壁に、各業界の方からもらったコメントが貼ってあったのだが、その中にドイツ公共放送プロデユーサーのマライ・メントライさんからのコメントがあった。本編を見終わった後に見つけたのだが、「本作が浮き彫りにするのは「良心VS邪心」ではなく、免罪符が必要か不要かという議論だ。」という氏のコメントが、一番この作品をよく表しているなと思った。
キヨ

キヨ