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ヒトラーのための虐殺会議のみのレビュー・感想・評価

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)
3.8
ナチスドイツによるホロコーストの始まりとなったヴァンゼー会議。
この映画はアドルフ・アイヒマンによって記録された議事録に基づき、会議を忠実に再現している。

凄まじい。
細部までこだわって作られている。
作品を通して起承転結の起伏は特になく、大体のシーンが会議室のセットで会話が飛び交うという、ほとんど密室劇に近い。
この密室空間が作り出すジリジリと迫ってくるような閉塞感と緊張感が「ホロコースト」の残虐性をより引き立てていた。
15人の出席者たちが、まるでビジネスのようにユダヤ人の大量虐殺を話しあう様子に戦慄が走る。
また回想シーンや計画のイメージなどは映像ではなく会話によって提示されるため、よりリアルな会議が再現されている。
これには再現性を追求するだけではなく、観る側にあえて「想像させる」という狙いもあったように思える。
想像できてしまう恐ろしさ。
これにより観る側に悲劇を再び事実として認識させ、考えさせることができる。

淡々とした作品ながらも内容は恐ろしく、常に緊張感を感じながら観ることができた。

それにしても邦題納得いかないな。
この作品内でのヒトラーは「意見を無理くりそれっぽく通す」ために使う決まり文句的な立ち位置だったから、とても「ヒトラーのための〜」の感じではなかった。
み