柊

正欲の柊のレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
3.7
原作既読。

朝井リョウの描く世界はいつもそうじゃない方の見方がとても良くて、随分若い作家さんなのにすごいなって、「桐島、部活〜」の頃から思っていた。
今作も意欲作。ただたまたまタイムリーな話題が結果として絡んでいるので、大丈夫かな?って要らぬ心配をしてしまった。
と言うのも主役が稲垣吾郎になっていたから,てっきり不登校のyoutuberコンビの家庭を中心に持ってくるのかな?と思っていたら…違った。
ショッピングモールの店員と同級生を軸にするなら、エンドロールの並びは違うような。
トメでいいじゃん稲垣吾郎。変な忖度ってこういう事じゃないの?てっきりガッキーの役は山田真歩の役だと思っていた。とんだ勘違いでした。

人はそれぞれいろんな嗜好を持って生きている。その嗜好が市民権を得るか否かによって,人はこんなにも生きにくいのだと言う事。少し前までは鉄オタはバカにされていた。ゲームもアニメも日陰の存在だったと思う。それに比べて日の当たる場所にいる嗜好もたくさんある。水💦が好き。これはそんなにマイノリティなのか?滝が好きだから各地の滝を巡る。公園の噴水を見る。これは至って普通の嗜好だと思う。がその水と戯れる女性や子どもが対象となれば話は違ってくるし、嗜好の為に何かに危害を加えたらそれは犯罪になるのだろう。だから今の時代、人は己の嗜好をオープンする事をこんなにも恐れる。
それは普通という言葉があまりにも画一的で固まってしまったからなのかな。普通である事が生きる最低限のハードルみたいになっている。普通って何?こんな世界生きにくいよね。

だからこそ世の中は、LGBTQとかダイバーシティとかいろいろ言っているけれど、物事を判断する立場にいる人間が何にも変わってなければ解釈は広がらないだろう。最悪は冤罪の温床にもなりかねない。理解できない事が山とあり人はみんな違うんです。という世の中になるにはまだまだハードルが高そうだ。
でも「どこにもいなくならないから」と言った最後のセリフにより、信じる事ができる相手に巡り逢えて良かったと思える。この言葉を際立たせるためにずっと冴えない,生まれた時から冴えないガッキーがいたのだと思う。しかし、磯村勇斗と同級生とは,活躍の時期が違うからだとは思うが若干違和感がある。同級生役もすこし上の人の方が良かったかな。

でも理解できない人には永遠にできないだろう。
だからこの作品観ても、なんだか面白くないなって感じる人がきっと少なくないと思う。

大学生が学祭の企画で語るダイバーシティの浅さとか山田真歩演じる母の苦悩とか、不登校の子どもの本当はもっと今時の子どもらしく頭でっかちのこまっしゃくれ感とかが不足していたので、全体的にバラバラ感は否めない。
後,私的には諸橋大也のこれじゃない感が…
柊