人としてこの社会で生きることの違和感に限界を感じている者同士が、私もここにいていい、生きていていいと思える繋がりを見つけていく。それが男女だとしても恋愛関係ではない上で一緒に生きていく選択をするのが本当によかった。
『正欲』の佐々木くんと桐生さんは、大きな共通点がある。ふたりはこの世界で生きていく上でお互いが必要であることを認識し、社会での普通を装うために結婚を選択する。寝室は別、冷蔵庫も食事の支度も別、もちろん恋愛感情はない。それぞれの生活が同じ空間で繰り広げられている。
me&youでの連載『呼びようのない暮らし』は、とてもこれに近くて恋愛感情を持ち込まずに男女ふたりで部屋を借り共に生活をする。連載の第二回では、気心が知りきれていない人との共同生活の難しさについて書かれていた。友人でもなく恋人でもない、だからこそ「呼びようのない」なのだけど気を遣ってしまうストレスが強くあるようだった。
現実の状況を知ると、やっぱり性対象同士が恋愛感情なしで共同生活をするとなるとなにか大きな「共通点」が必要なのかもなと思う。佐々木くんと桐生さんのように、同じフェチズムを持ちそれを共有できる、エクスタシーを分かち合えるのは、この上ない繋がりだと思う。ただ恋愛感情なしで暮らす、という同意だけでは難しいのかもしれない。
