しお

正欲のしおのネタバレレビュー・内容・結末

正欲(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

自分の中の“普通”の押し付けは確かに息苦しさを生むだけかもしれない。ただ、自分と違う考えの人のところにわざわざ出向いて否定して回るようなことはせんけど、どうしても自分で想像や理解できないことをすんなり受け入れるのは難しい。
自分の考える正しさに引っ張られないようにすることは本当に正義なんだろうか。

「あっちゃいけない感情なんてこの世にはない」っていうのももやもやした。表に出さずに抱えておくだけならいいってこと?
考えるだけなら自由って言うけど、他人を傷付ける可能性を孕んだ感情はあっちゃいけない感情やと思う。思うだけでもダメなことってあるよ。

それぞれマイノリティな感情を抱えて、誰にも理解してもらえず、苦しみに押しつぶされそうになってるのは伝わる。でも、勝手に人の家に押しかけて窓ガラス割るとか、子ども相手に実際そういうことしちゃうとか、一線超えちゃってるやん?って思った。

水フェチ3人で集まるところも、2人は、子どもの姿をああやって動画に残すことに対する抵抗感とか違和感はなかったんかな。
なんかそれってマイノリティって言葉で片付けて良いことじゃなくて、モラルの欠如というか、あまりにも自分の欲を満たすことにしか目がいってない。
劇中で言うところの考えるだけなら自由のはずの感情を、行動に移しちゃったから3人とも連行されてるんやろうけど。

そもそも水フェチっていうのもそんなに生きにくい話なんかな。今時様々な理由で1人で生きていくっていう選択を取る人もおるんやし、特別な嗜好がなくたって、それぞれ苦しみも抱えてるし何かに擬態するように生きてる人も多いと思うんやけどなあ。
地元で実家暮らしやから余計しんどいんじゃない?とは思った。

最後のあの一言で、マジョリティ側に立っていたはずの寺井さんの立場が一気に逆転してひとりぼっちになったところはすごかった。
寺井さんのお家の話は正直、お父さんの肩を持っちゃうけどなあ。映し方にだいぶ悪意があるように感じた。子どもを守るために必要なことも言ってるし、「普通に生きていけない人間」って加害性のある人間ってことでしょ。
子どもの意思を尊重したいお母さんの気持ちも分かるけど、お母さん自身が動画のこと完全に人任せにしてたり、未成年の配信可能時間のことも知らんぐらいネットリテラシーの欠片もなさそうだったり、いろいろ危険すぎる。準備も編集も他人任せで水遊びしてるだけのYouTubeでは学校の代わりになると思えんし。

わたしには共感できんところが多かったな。
そう思うのも罪なんかな。
わたしが凝り固まった嫌な大人になっちゃってるってことなんかな。
しお

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