りた

正欲のりたのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.0
「観る前の自分には戻れない」
ポスターの言葉が、ズシンと胸に響いた。

鑑賞中ずーっと、じっとりべったりねっとりした生き辛さのようなものを感じた。

私は極めて普通の人間だし、意識してマジョリティとして生きようとしてきた気がする。そしてそれに特に違和感も抵抗感もなかった。
だからマイノリティの方が抱えている苦しみや辛さを本当の意味で味わったことはないのだと思う。
それでも、素晴らしい演技に魅せられてそういう気持ちを少しだけ理解できたような(体感していない以上、何を分かったようなことを!と言われても仕方ない)気になれた。

この映画を観て、「救われた」と感じておられる人がたくさんいるとしたら、その事実を私は知らないといけない。
普通を押し付ける怖さ、グロさを自覚しないといけない。

もし自分の娘がマイノリティな趣向を持ったら。
私は寺井家の母のような選択ができるだろうか。少なくともこの映画を観る前まではゴローちゃん寄りの考え方でいたなぁ…

映像だからできるような表現がたくさんあった気がして、原作の本はどんなものなのかとても気になった。いつか読みたい。
りた

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