しん

ウィッシュのしんのネタバレレビュー・内容・結末

ウィッシュ(2023年製作の映画)
2.7

このレビューはネタバレを含みます

「星に願いを」から捻り出したアイディア先行の映画だったと思います。
脚本のドラマ性がかなり軽薄だったことと、キャラクターを血の通った人間その人として描こうとしていない感じ、本当にディズニースタジオの作品かと疑ってしまいました。

まずキャラクターについてですが、主人公を含め、あまりにも記憶に残らなかった。
人種や性別、それらに気を取られて血の通ったそれぞれの人間としての内面を語るのを忘れていたのではと思います。勿論其れらをアニメーションで表現するのは大切な事ですが、肌の色や性別はその人にとって最も重要なモノではないんですから。ディズニーがそれを教えてくれた筈なのに、悲しい気持ちになってしましました。
そんな結果になるならば、7人の小人のオマージュなんて全く必要ないですし、登場人物を減らしてもう少し丁寧に描いて欲しかったです。

ドラマ性の部分については、主人公やその周りの人間たちの「ウィッシュ」が殆ど描かれていないのは疑問でした。
例えば主人公の家族、父親について、軸をしっかり据えて進行した方が遥かに良い。その喪失や葛藤を乗り越えた上で主人公は18歳になってどんなウィッシュを差し出そうとしていたのか。そしてそれが無下にされようとしていることを知り、初めて物語が鼓動する筈です。"優し過ぎる"主人公は祖父の願いを守りたかったというのは分かります。それにしても家族や仲間についてのドラマ性を全く感じなかったですね。
その証拠に、主人公のアーシャは物語の序盤から終盤まで全く成長していないんですよね。又は成長が描かれてないんです。これには驚きました。

最後に映像について、これもかなりイマイチでした。
終始未完成の映像を見せられているようで、のめり込めなかった。会話シーンはバストアップが多い印象でかなり退屈ですし、倉庫のような場所での鶏達の歌唱シーンは『美女と野獣』のルミエールのパーティーシーンと比べると全くわくわくしないんですよね。正直コラ映像かと思うくらいチープでした。


ディズニー100周年の記念作品、素晴らしい短編作品の直後にこれが流れるのは少し酷でしたが、今の歪んだディズニー体制そのモノが生み出してしまった作品ですね。先日のCEOの発言には期待できそうですし、新たな素晴らしい作品を期待しています。
しん

しん