DJあおやま

ウィッシュのDJあおやまのレビュー・感想・評価

ウィッシュ(2023年製作の映画)
4.2
ディズニー100周年を記念するメモリアルな作品。冒頭から主人公・アーシャの祖父・ザビーノが100歳という設定が出てきて、100周年を意識した作品だとわかる。また、過去のディズニー作品のオマージュが散りばめられており、あまりディズニーに詳しくない自分でもニヤリとしてしまうところがいくつかあった。
ロサス王国を舞台に、マグニフィコ王が大人たちから”願い”を受け取り、月に一度その願いを実現させている。この設定が優秀で、ディズニーがこれまで大切にしてきた願いの力を子供たちに伝えるのにわかりやすい。また、ストーリー自体もわかりやすく、勧善懲悪に徹していてただただ快活。後半の展開は少々早足で、思いのほかすぐ決着がついてしまい少し拍子抜け。
ヴィランであるマグニフィコ王はナルシストな部分はあるが、強い信念を持っており、私利私欲のためではなく、自国の存続、恒久平和のために行動しており、完全なる悪とはない。自分の築き上げた王国を脅かされ禁じられた書物に手を出してしまうものの、その異常さの背景には幼いころ両親を盗賊に殺されているという過去もあったり、悪として憎めない。彼が歌う『無礼者たちへ』は、福山雅治のらしさ溢れる歌い方も相まってチャーミング。彼の主張は、叶わない願いを持っていても、それが破れる悲しみを味わうだけだから、いっそ人々の精神の平和のためにも願いを持たない方が良いというのは、大人になってしまった自分からすると一理あると思ってしまう。ただ、劇中、願いを破壊されてしまった人の、あの悲しく寂しい表情を見てしまうと、やっぱり叶わなくとも願いは持つべきで、そう子供たちには伝えていきたい。
劇中、ディズニーならではの素敵な音楽たちが彩る。主題歌の『ウィッシュ~この願い~』は、鑑賞前はフックがない地味な曲という印象だったが、劇中何度か流れるなかで、サビ終わりの「……ない(!)」という部分の歌い方の違いで、キャラクターの心情を感じ取れるという優秀な楽曲だと感じた。『ようこそ!ロサス王国へ』のワクワク感も心地良くて、他の楽曲もどれも良くて観終わったあと、毎日のように聴いている。キャストも良く、バレンティノがジーニー過ぎるのはさておき、生田絵梨花の爽やかな好演、福山雅治の悪役っぷりもカッコ良かった。
美しいドレスを着ない、素敵な王子様もいない、強さと優しさと兼ね備えた女性を描いており、時代の流れを感じつつも、この作品はディズニーの新たなスタンダードになりうる作品だと思った。久しぶりにしっかりディズニー作品を見て、そのウェルメイドっぷりが楽しかった。
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