七沖

ウィッシュの七沖のレビュー・感想・評価

ウィッシュ(2023年製作の映画)
3.0
〝奪われた願いを、取り戻せーー〟
ディズニー100周年!すごい!
世界で最初に上映された映画が1895年の『工場の出口』ということを考えると、映画の歴史は129年!
ということは、ディズニーの歴史は映画の歴史と言ってもいいのかもしれない…?
少なくとも、かなりの長い時間を映画史と共に歩んできたディズニーが送る、記念すべき節目の作品が本作だ。

だが、残念ながら個人的にはあまりハマらなかった。
というのも、ディズニーの名作はたくさんある。そうしたマイベストディズニー作品と比較すると……本作はそこまで面白いと思えなかった。
比較対象のクオリティが高すぎる、というのはあるかもしれないが、とはいえセルフオマージュもたくさん盛り込まれている。嫌でも比べてしまう…。

メインとなる歌『THIS WISH』のサビは確かに耳に残るが、歌唱シーンで心が揺さぶられたかと言われると、あまり感動出来なかったのが本音だ。
かつての名作たちでは、主人公の価値観が変わる瞬間や困難に立ち向かう時に歌を歌う。
果たして本作の主人公アーシャが『THIS WISH』を歌った時にそこまでストーリー上の盛り上がりがあったかと考えると…個人的にはちょっと弱かったように思う。
その理由は、主人公が行動する動機じゃないだろうか。
人のために動くのは良いのだが、別にその人の生死がかかっている緊迫した状況ではない。動機が自分の夢ならまだ納得できるが、人の夢のため(しかも当の本人は夢を認識していない)のち、「なぜそこまでする…?」と思ってしまった。

主人公の友人たちも、たくさんいて一人ひとりが印象に残らない。7人の小人のセルフオマージュかもしれないが、もっと人数を絞ってキャラが際立てば良かったのに…

映画が始まった瞬間は、「おっ!」とワクワクした。
過去作のアニメらしい二次元的と、ここ最近の3Dを融合したようなタッチで、「なるほどこれがディズニーがたどり着いた映像表現か」と思ってのだが、意図的に彩度を抑えているのか、せっかくの盛り上がりどころでも映像の鮮やかさがあまり感じられなかったのは残念だ。

ディズニー100周年作品ということで、過去作に縛られて過ぎている印象だった。
100周年の節目に新しいことをするのは、かなり勇気がいることだと思う。それだけディズニーには愛されてきた作品が多すぎる。
でも、だからこそ…集大成ではなく、100年の歴史を積み重ねたその先を見せて欲しかったな、というのが正直な感想だ。
七沖

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