ゆう

西部戦線異状なしのゆうのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
4.8
第一次世界大戦を、一人の若者の視点で描いている。戦争がもたらす失望と戦争による人間性の喪失が生々しく伝わる、まさに反戦映画。

戦争映画ではどちら側の視点で観るかによって感情移入する側が決まってしまう。けれど、どの国の立場でも、誰の視点でも、不幸でしかないと理解して観るようにしている。

国家のためにと意気揚々と戦場へ向かう若者に渡されたのは、そうとは知らない亡き兵士の軍服。一人の人間の命など、些細なものとして扱われる戦争。

戦争を続けるのかやめるのか上層部が話し合うシーンが、悲惨な戦場と並行して描かれている。死ぬも生きるもトップ次第。戦争を決めるのはほんの一握りの人で、巻き込まれる人は数えきれないという悲劇。誰のための戦争か。今のロシアとウクライナのことを思ってしまう。

この映画が3度も製作されたのは、まだまだ反戦を訴える必要がある世の中だからだろう。100年以上が過ぎた今でも、当時のことを知り、過去から学び未来を考えることをやめてはいけない。

もうすぐ終戦記念日。
戦争ほど残酷なものはない、平和ほど尊いものはないと改めて思う名作だった。
ゆう

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