面白かった。主人公が映画作りに魅入るきっかけに『地上最大のショウ』があるのはいいとして、列車同士をぶつけたいという破壊の願望がそこに無意識的にそなわっているのが拗らせ感満載で「このガキは一体これからどうなるの」とわくわくさせられる。スピルバーグの家族観を知りたければ本作を見よう。特に母と息子の複雑な心理的関係性に目が釘付け。また家族の描く対角線とは全く別に、カメラの意思が作り手の意思を越えてしまうことについてを凝視した映画でもある。しかしそれでも作り手に絶えず付き纏う選択の責任とも向き合うあたりが、本作を飾るエピソードを老人による都合のいい美談に終わらせない確かな所以だと思った。叔父さんとかジョン・フォードとかの登場シーンは普通なら使い捨てといわれても仕方ない尺の短さだけど、彼らの語るそう多くない台詞がスピルバーグの強い記憶と感情に裏打ちされてるからか、映画のハイライトになるには充分すぎるほどの説得力に満ちあふれてる。そしてラストがお茶目すぎた。スピルバーグってそういうノリできる人なんだと興奮すらした。しかし思えば「このさき映画を撮るとしてもこのことは…」みたいな台詞をプロムから抜けた主人公が言うその水面下で、舌をペロッと出して笑うスピルバーグの表情はすでにあざとく存在してたわけだ。恐ろしいジジイだな。好きになっちゃった。
