自伝的作品なので、今までのスピルバーグ監督の感動作を期待して観ると残念に思うかもしれません。
監督が生まれて初めて映画を観てから、映画業界に足を踏み入れるまでのお話なので、その後の華々しいご活躍に触れられることもありません。
主人公の名前はサミー・フェイブルマン。彼の家族の物語となっているので、『フェイブルマンズ』というタイトルなんですね。
元ピアニストの母親(ミシェル・ウィリアムズ)はクセの強い人物。子育てのために夢を断念した人でした。
父親(ポール・ダノ)は才能あるコンピューター技師で、キャリアを積んでいく中で、一家は頻繁に引っ越しをしなければなりませんでした。
母からは芸術家としての気質を、父からは技師としての才能を受け継いだんですね。特に母親の気質を強く継いでいるようで、彼と母親のふたりを中心に描かれていました。
サミー少年は、8ミリカメラで家族の様子や自作の西部劇などを自由に撮って編集し、周囲を大いに喜ばせていましたが、時にフィルムは知りたくなかった真実を記録したり、被写体の心を傷つけたりする事もありました。
これといった大きな感動もなく鑑賞を終えたんですが、改めて監督の作品群のジャケ写を時系列で眺めていくとここで感動がこみ上げてくるんですよね。
芸術がもつ負の側面をも抱えながら、あれらの感動作を私たちに届けてくれた監督への感謝の気持ちで、満点のスコアをつけさせていただきました。
「人生の出来事、そのひとつひとつが映画になった。」
『フェイブルマンズ』は今までの名作を再感動させてくれる特別な作品な気がします。