るるびっち

フェイブルマンズのるるびっちのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.1
映画によって人生を与えられた男が、映画によってそれを紐解く。
暗がりを恐がる子供が、その暗がりで映画という衝撃に出会う。
『地上最大のショウ』のミニチュア撮影を自宅で模倣して、彼の映画人生は幕を開ける。
三つ子の魂百まで。『未知との遭遇』でUFOの光に車が包まれるシーンや『インディ・ジョーンズ』のトロッコなど、印象的な撮影は幼児期から培われた得意のミニチュア撮影の成果だ。

映画によって生かされた少年は、やがて映画によって家族を失う。
プライベートフィルムで、家族の秘密を見つけてしまうのだ。
映像は残酷にも、現実の中から真実だけを抽出してしまう。
映画は彼に人生を与え、同時に彼から家族を奪う。
祝福よりも呪いが大きい。芸術家は孤独だ。

しかし結局、母も彼も父も我が道を行く。
それぞれが自分のやりたいことをやる。
そこに悲しみはあるが、それがベストな人生の選択なのだろう。
自分を押さえ込んで生きるより、本当にやりたいことをやるほうが幸せな人生だ。両親の生きざまはそれを伝えている。

映画は真実を見抜くこともあるが、逆に大きな嘘をつくことも出来る。
イジメっ子を美しい英雄に仕立て上げる。
アイスクリームを鳥のフンに見立てたり、火薬なしで土煙を上げる仕掛けを作ったり。銃撃戦の迫力を増すためにフィルムに穴を開けたり。
そうした数々の工夫が、人生の工夫に昇華されていく。

そして最後は映画の神様から祝福を受ける。
それまで映画の呪いを主に受けていた主人公は、最後に祝福を受けるのだ。
スピルバーグが死んだら、功績を記録したドキュメンタリー映画が創られるだろう。
死んだ後も、彼は映画を創り続けるのだ。
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