ぽかぽか

フェイブルマンズのぽかぽかのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.5
自分のやりたいことをやるために商業映画としての、観客を楽しませる配慮とシネフィル的なエゴや自意識のバランスが絶妙で、例のラストシーンもそうだし、ぎこちないテンポ感の食卓シーンでの会話だったり、不透明で複雑で多様な関係や感情の奔流を映し出すその精密で的確な演出(俳優の動かし方等)を見て本当に難しいことをやっているなと感心。

熱狂的なキリシタン(というよりキリストオタク)の女の子の家に行って部屋で「口を開けて キリストの精霊を受け入れるのよ」つって女の子がハーって息吐いてそのままキスするところで二葉亭四迷の「平凡」思い出してブチ上がった。

キスする時のお互いの唇が中空に滞留するようなあの緊張と距離が織り成す至福の恩寵に似た何か。その後ベッドに押し倒されて見上げた先のキリスト像のショットも素晴らしい。ビーチでの撮影でカメラを構えるフェイブルマンに後ろから抱きついて自らもファインダーを覗く彼女のショットも激ヤバだし、そのまま暗転して自宅で撮影されたホームビデオのフッテージに繋がるの祝福すぎる。

手のひらに映像投射するショットなんかズルすぎるし、母親と父親、フェイブルマンの「倒れ込む」運動が印象的。

終盤、母親とキッチンで話すシーンで最後にカメラが後退していって、1年後に時間飛ばすところで涙。紹介しようって部屋に案内されてフォード作品のポスターをぐるりと見回すところで本当にグッときた。最後のアレも可愛げがあって良いと思う。前を向いて生きていくよ。
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