ぽかぽか

PとJKのぽかぽかのレビュー・感想・評価

PとJK(2017年製作の映画)
5.0
「疾走の映画史」というものがあったらムルナウの『サンライズ』やトリュフォーの『大人は判ってくれない』、鈴木清順の『春婦伝』などと共に筆頭となりそうなくらい、冒頭の土屋太鳳のダッシュから始まって終盤の亀梨和也まで人物がロングショット&長回しで走って走って走りまくる大傑作。16歳の女子高生と26歳の警察官が結婚するという荒唐無稽でそんなわけない話が驚くほど自然に描かれるが、それとは対照的に高杉真宙のベタな家庭環境の悪さも同時に描かれるので収まりが良い。

一瞬だけクローズアップで映される手元の写真のショットや後夜祭とは別に屋上で放たれるただ1つの天灯、または高杉真宙がバイトの面接終わり警官の亀梨和也に呼び止められ会話するシーンの沈みかかった太陽光に照らされる亀梨和也の横顔などに「映画」が立ち現れる。フリッパーズギター流すのも文化祭で「シュガーソングとビターステップ」演奏するところも最高すぎてどうにかなりそう。群衆の豊かさ。土屋太鳳が住む家も亀梨和也の家も広くて高そうな部屋で、ああ豊かさというのはなんて素晴らしいんだろうと思う。

土屋太鳳と亀梨和也がはじめてハグするシーンの、ハグをそれ単体でやるのではなく亀梨和也の過去の話を持ち出すという手際の良さ。キスはラストまで遅延される。観覧車でのプロポーズも狭いしまだ昼だしでどこかロマンチックさに欠ける上、婚姻届を出すシーンが描かれていないので本当に結婚したのかどうかは分からない。

2人の入院/お見舞い(付き添い?)の関係が転倒し反復され、それは亀梨和也と父のエピソードも同じく転倒・反復されるという技巧的設計。この反転は文化祭での高杉真宙が警察服を着て亀梨和也が学生服を着るという部分にも見られる。それにしても土屋太鳳が輩共に連れ込まれ亀梨と高杉が救い出すシーンの、ブザーが鳴って土屋と亀梨の秘密が明らかになり高杉が動揺するという凄まじいごちゃごちゃ感は本当にすごい。刺されるシーンもスローモーションや音楽といった編集をすることなくあっさりと処理してしまう。

クズ男が川瀬陽太なのと亀梨の姉が河井青葉なのがめちゃ嬉しかった。路面電車が走るロケーションも良い。あとは学校を描くときにいじめ等の暗い要素が一切なく、つとめて楽天的に描かれるのが素晴らしい。だからこそこの映画はリアリティが希薄なのだけど、それは真のフィクションであるという証左でもある。
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