それぞれにトラウマ・喪失を抱えた白人女性と黒人男性が、織りなす人生の生き直しの物語。
ニューオーリンズの蒸し暑い夏の夜にプールに入り心の殻が破け解放される。
その結果、衝突もあるがそれも一歩前進。
これまで他人を見限って自ら孤独に走ってきた、主人公が小さな一歩を踏み出すラストのセリフが爽やかな後味。
自分も割りと寂しがりの癖に一人好きなので身につまされる。
〈誰かと一緒なのはいいもんだ。朝はコーヒーを一緒に。夜には一服。たまには料理も。〉
水の表現が視覚的にも作劇上にも効果的で、かつ美しい。
灰色がかった、締まった硬質な色彩の画面が多く、演技も物語も抑制を効かせていて地味で見る人を選ぶ嫌いはある。
初監督リラ・ノイゲバイアーの手腕は今後も期待だが付加情報見ると脚本を一読して〈これは私の物語だ〉とプロデュースと主演を買って出たジェニファー・ローレンスの貢献度も大きそう。
主演二人の抑制の効いた演技が素晴らしい。相手役はTVシリーズ『アトランタ』のぺーパーボーイことブライアン・タイリー・ヘンリー。
『アトランタ』のときより太ってる気がする。役作りだろうか。
あどけなく物憂げな表情に、持て余すような大きな体躯。それが
抱えきれない、家族にまつわるトラウマ・喪失を持つ役柄重なり味わい深い。