このレビューはネタバレを含みます
父・政次郎役の役所広司さんの演技は申し分ない。宮沢賢治を演じた菅田将暉くんも悪くはないが、なにより妹トシの森七菜の垢ぬけない少女然とした演技が光っていた。
なので、『銀河鉄道の父と妹』でいいかな(笑) とはいえ、本当は『銀河鉄道の』ではなく、『宮沢賢治の』だよね? 原作タイトルがそうなっているから仕方ないのと、エンディングのメルヘンな車窓のシーンへと繋げるためには、そうせざるを得ないか。
にしても、宮本賢治像を塗り替える設定。これは、宮沢賢治ファンは異を唱えたくなる。ここまでのダメ男だったとは意外。
「雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ・・・・サウイフモノニ ワタシハナリタイ」は、まさに「成りたい」との願いだった。
農地改革にも取り組み、地に足の付いた郷土の作家さんというイメージだったから、もう少し雨にも風にも負けない強さのようなものを持った人なのかと思った(せめて精神的なものでも)。
ところが実態は(本作の設定が事実に即しているとすれば)父親の庇護頼りの、本当にダメダメ人生だったんだと、ちょっと愕然とした。
そんな賢治を最後まで見捨てず育て上げた父の愛情を賞賛すべきか否か。そこも意見が分かれるところだろう。
そして、エンディングの、いきものがかりの起用・・・。
日本を代表する詩人の生涯を描いた文化的にも貴重なお話であるのに、海外に打って出て宮沢賢治を世に広めようという高い理想も感じられない、内輪ウケに終始した映画作りを象徴しているかのような、つまらないエンディングだった。
頑張れ、邦画!(アニメ以外の!)