このレビューはネタバレを含みます
観客に考えさせる映画は嫌いじゃないけど（むしろ好き）、これは今まで見た中でもダントツ。
謎解き系ではないのでそういうのを期待しちゃうと退屈するかも。
（朝イチの映画館、3人しかいなかった観客の一人は途中で帰っちゃった）
観たまま素直に感じた感想としては、カルムの心情がとにかく切ないというか辛いというか。
父親としての気持ち、一人の人間としての気持ちが融合しない。
そういう気持ちが観ていくうちに少しずつ積もり積もって行って、UnderPressureのシーンで涙になって溢れた感じだった。
娘ソフィに対する愛情は間違いなくあるカルムだけど、それだけでは救われない何かがある。
それが何かははっきりは示されないのだけど、なにか命を脅かす病を抱えているらしいということはわかる。
設定では「うつ病」という事らしいけど、そこまでわからなくても、生きることに怯えていることは伝わるからそれで充分という気がする。
11歳のソフィにはそこまではわからない。
でも、ママと離婚したパパが楽に生きてないらしいことは感じている。
きっとお金がないんだろうな。きっと寂しいんだろうな。
だからパパを困らせたり悲しませたりはしたくない、パパが大好きだから。
折に触れてカルムがソフィに話す（伝える）親としての愛情がにじむ話、そしてソフィのいないところでのカルムの姿、そのどちらも知る観客はどんどん苦しくなっていく。
でもこの映画は「どうすればよかったのか」という話ではないのだよね。
大人になったソフィが見る、知る、当時はわからなかったこと、それを見せているのがこの映画。
このビデオテープがなぜソフィの手元にあるのか、ということを考えれば、ソフィにとってはその「答え」でもある。
辛いけど、カルムのソフィへの溢れる愛情が伝わってくることで、どこか満たされる部分もあった。
なにより、説明的なことはなにも語られないのにこんなに心が動かされるってなに？という驚きを感じた映画でもあった。
