春

aftersun/アフターサンの春のレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.5
最初何もわからなかったけど、後からじわじわと、この「わからない」という感覚こそ作品の本質なのかもしれないと思った。

メンタルヘルスによる苦しみは当事者にしか理解できず、フィクションのように感動的に乗り越えられるものでもない。
「大人になっても なんでも話していいんだよ」という言葉(うろ覚え)はきっと本心から出たもので、父は本当に娘の成長を見届けるつもりでいたんだと思う。だからこそ、その不安定さが苦しかった。
子どものころ思っていたより大人ってずっと弱いよね。

当時「親」という絶対的な安全基地だった父親を一人の人間として見たとき、その弱さに寄り添える年齢になったとき、父はもう会える場所にいなかった。
それでも愛されていた記憶だけは確かで、心象風景のように美しい海が 父との思い出の美しさを表しているようで胸が締め付けられた。

終始一貫して、記憶の記録を辿ったような2時間だった。
人間は自分の目に映るものしか見られないから、いつもその外側にあるものを求めるんだと思う。
まさにタイトルの通り、後からヒリヒリと心を焼かれるような、ソフィの記憶を追体験したような映画だった。
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