くり

aftersun/アフターサンのくりのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.5
胸を打たれた。

観終わってからしばらく経ってるけど、その時間の経過とともに、この映画の持つ"切なさ"と"優しさ"に心が侵食されていっている感じがしている。

思い返せば返すほど、考えれば考えるほど、日焼けの跡のようにひりひり感は増すけれど、同時に清々しさも増してくる。

父親の心情を理解するには幼過ぎたが、幼いながらに何か良くない変化が父親に起こっていることは感じ取っていた二人きりの旅行。
当時の父親と同じ歳になった今、パートナーも出来それなりに人生の酸いも甘いも経験した今、当時の記録を見返しているソフィはどんな感情なのだろうかと想いを巡らせてみる。

当時の父親の苦悩に共感し、そして助けられなかったことに後悔し、でもその中で自分に残してくれた愛情に気付き、その愛情を糧にこれからの人生を生きようと決意する。
テレビの画面を見るソフィにはそんな心情の遷移があったんじゃないかと考える。

人生は言うなれば「あの時もっとこうできてれば、、」の繰り返しなんだと思う。
その結果は変えられないが、そんな経験が人を成長させる糧になる。

変えられない結果。これが死別だからなおさら"切ない"。
でも父親から受け取った愛情は生きる糧になり"優しさ"で溢れている。

そんな"切なさ"と"優しさ"という相反する二つの感情で心を満たしてくれるところが本作の魅力だと思う。

きっとこの先も忘れられない特別な作品として、自分の中に残り続けることになるんじゃないか。
それくらい胸を打たれた。
くり

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