小屋

aftersun/アフターサンの小屋のネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

 先月早稲田松竹で初めて見て、今回2回目の鑑賞。最初見た際の印象としては、なんだこの変な映画?という感じだった。作品として解決を迎える前に終わってしまった感、言葉足らず感を覚えた。
 だが、今回鑑賞してみて思ったのは、言葉足らずなのではなく、舌足らずなんだと思う。それも意図的な。実はちゃんと不穏なシーンを挟むことで、お父さんに何かあるよ、ということは説明できてるから言葉足らずではない。じゃあなぜ舌足らず7日というと、それは娘自身がお父さんのことをわからなかったから、「何か抱えている」ということしか言えないからじゃないか。この作品は途中で娘が大人になった際、ホームビデオをみてお父さんを思い出すという流れだということが判明する。お父さんは何か精神病のようなものを抱えているが、娘視点で見ると、それがなんなのかわからない。それをそのまま作品にしてるので、わからないことを、そのまま描くほかないんだと思った。
 エンタメとしては、あまり面白みがないかもしれないし、分かりづらい映画だとは思う。だけど、この作品のもつ人間の核に触れるような感情たち、とくに優しさと同時に存在する寂しさは、こんなにも心を動かしてくれた。そして、映画というジャンルでできることの可能性を最大限引き出したその野心的な演出も素晴らしかった。去年で1番の映画だ。
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