Uえい

aftersun/アフターサンのUえいのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.5
去年凄く話題になってたけどタイミング合わず今更になって視聴。ハンディカムで撮られた映像から、色彩も懐かしい感じでコーディネートされていて美しい。父娘で過ごすバカンスを大人になった娘が振り返る形で描かれるのだが、当時の少女の気持ちと、大人になったからこそ分かる当時の父の気持ちに接近していく切なさが懐かしさと融合する。

たまたま「ライ麦畑でつかまえて」を扱ったテレビ番組を見た。主人公の少年ホールデンは社会に馴染めず抑えきれない反発心を持っているが、妹には愛情深く接していた。本作はライ麦畑の妹から見たホールデンを描くように、娘の視点から、父の姿が描かれる。父は瞑想に取り組むなど、自殺衝動など精神的な問題を抱えていることが仄めかされる。しかし、娘に接する時は笑顔で、優しい父である事を努めようとするのが切ない。因みに、サリンジャーがライ麦畑を上梓したのは父カラムと同じ31歳の時だった。

娘ソフィの子供視点も繊細に描かれていた。父の悩みを察知しつつも子供らしく振る舞う大人びた所もある。しかし、年上の青年達と遊ぶとなると歳の差を実感して強く子供である事を自覚する。ソフィは同年代の男子とキスをするが、無理に背伸びした感じが痛々しくも見えた。

大人になったソフィが映像を見ながら回想するというのは、当時理解できなかった事が理解できたという表層的なことだけじゃない気がする。思い出すことはできてもそれは絶対的に当時と異なるものだし、どういう気持ちだったのか覚えていない事も多いだろう。そういった成長・時間の経過に伴う喪失が儚く描かれていて感動した。
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