明石です

イグジステンズの明石ですのレビュー・感想・評価

イグジステンズ(1999年製作の映画)
4.2
脊髄に直接コントローラーを突き刺し、バーチャルリアリティに入り込んで遊ぶ次世代ゲーム「イグジステンズ」の体験会に呼ばれた人たち。プレイに参加すると、五感すべてがゲームに溶け込むあまりのリアリティに現実との区別がつかなくなる。ゲームの中で殺したと思った相手が実は現実の世界でも死んでいたり、現実世界で殺したと思ったら実はゲームの中のお話だったり。小学生の頃に読んだ(みんな読んでた)山田悠介の小説みたいな話だなあというのが第一印象笑。

主演は『ヘイトフル·エイト』や『ルームメイト』でヘイトフルな悪女を演じたジェニファー·ジェイソン·リー。助演は貴公子ルックスのジュード·ロウ(禿げてもカッコいいけど禿げてないこの頃はもっとカッコいい)となかなかにパワフルなキャスティング。まさかこの女優さんが正当なヒロインを務める作品があるとは、と思いきや、もちろん正当なヒロインなんかではなく、かなり変態的な嗜好を持ち合わせていて私好み。ですが、ゲームの中だから、という設定上の理由によるものか、全体的にやや演技が弛んでる。ジュード·ロウの大真面目な力演が少し浮いて見えるくらい。

クローネンバーグの「原点回帰」と謳われた作品ですが、全然原点回帰じゃないどころか、むしろ新たな挑戦と思う。この人の映画にしては珍しく、二転三転するストーリーに、最後はどんでん返しまで用意されている。なんたる周到さ!ちゃんとした(ハリウッドっぽい)映画になっている、という純粋な驚き笑。原点回帰と聞いていたので、もっとエログロ全開でラストに至るも全く救いのない画的にもシナリオ的にもぐちぐちゃな映画を想像してました。ラストの「驚き」で過大評価されてる感があるけど、1クローネンバーグファンとしては、ちょっとよく出来すぎてるなと思う笑。

もちろん、ヌメヌメした気持ち悪い(褒め言葉)オブジェクトも多数出現する。脊髄に繋ぐ”ゲームポッド”はカエルの身体を引き裂いて作ったものらしく、ゲーム内で出される食べ物はグロテスクを絵に描いたような代物。登場人物の背中に空けた肛門の形をした穴に、カエルの死体でできたゲームを繋ぐ。どこまでも有機的でウェットな質感に、気持ち悪さよりも清々しさが先立つ。本当、この監督は徹底しているなあと。
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