ヨウ

イタリア旅行のヨウのレビュー・感想・評価

イタリア旅行(1953年製作の映画)
4.1
ゴダールらヌーヴェルヴァーグ世代にどれほど絶大な影響を与えたかを肌身で感じた。男と女と車、そしてロケ地さえあれば天下無双の総合芸術へ昇華。倦怠期の夫婦、嫉妬と憎しみ、二転三転と原点回帰、何の変哲もない旅路で証明された至高のドラマ性。
自由自在なカメラワークが映し出す男女それぞれの名状し難い心の揺れ動き。傷つけ合ったり寄り添い合ったり。平行線だと思っていたものは気付けば形を変えて曲線に。その微妙な変化をミラノの誘惑的な雰囲気とともに捉えている。映画の模範解答と言うべきか。ゴダールが超えられないと嘆いた理由も納得。
たとえどんなにお互いを憎悪の感情でいっぱいにしたとしても愛を根こそぎ抹消することなどできない。胸の最奥部では一縷の想いが眠っている。小さな齟齬は取り返しのつかない行く末に直結。でもこの一言があれば希望は死せず。「愛してる」。錯綜する男女模様の果てに待っていた大団円へ祝杯をあげよう。
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