KnightsofOdessa

アシュカルのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

アシュカル(2022年製作の映画)
3.5
[] 70点

ジャスミン革命、引いてはアラブの春の発端となったのは、ある露店商の青年の焼身自殺からだった。イスラム社会では自殺は禁じられ、また、火葬の習慣もないことから、この衝撃は凄まじかったらしい。本作品は"カルタゴの庭"と呼ばれる建設中のマンションが廃墟のごとく建ち並ぶ開発地域で起こる焼死体発見事件を描いている。革命によって独裁者は消えたが、当時の政権に与した人々は未だに同じ仕事を続けており、彼らを告発する公聴会が捜査と平行して開催されている。刑事たちは公聴会の委員を父親に持つファティマ以外ソワソワしており、かつ革命を思い出させる事件の解決に躍起になる。後半にかけて超自然的に、かつそれが寓話的になっていくわけだが、なんとなく黒沢清『CURE』を思い出した。

本作品は途中で廃墟のイメージビデオみたいになるなど、只管に遅い。捜査も後手後手で常に遅れていて、公聴会を開くのだって遅すぎる。革命から10年以上経ったのに全く変わらない遅さへの皮肉だろうか。何かを掴み取れそうで掴みきれないもどかしさ、それでもそこに何かあるかもしれないという期待をサスペンスフルに描くことについては成功していたと思う。
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