YUMI

理想郷のYUMIのレビュー・感想・評価

理想郷(2022年製作の映画)
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wowowのガイドブックで紹介文を読んだ時、最初は村の人達と良い関係だったのが、ジワジワと悪化して村八分みたいになって行くのかなと思ってましたが、もう冒頭からいきなり険悪モード全開でしたね。
でも村の人達が主人公夫婦を煙たがる気持ちもわかります。風力発電の誘致に成功すれば、一気に金が入るのに、主人公は村の景観や自然の良さが失われてしまうと反対している。彼に言わせれば、この村の自然を大切にしていけば、やがて入植者や観光客も増え、徐々に発展して行くはず、ということなんだけど、この土地で生まれ育った人達にしてみれば、自然なんてものにはウンザリしていて、不便な暮らしやキツくて汚い仕事からも逃げたくて仕方ないんだろうね。
それに、主人公は所詮は外国人だから、農業やってダメだったら自国に帰るという逃げ道もあるだろって感じ?
結局村人、というか隣りに住んでるヤクザな兄弟との軋轢はエスカレートして、ついに主人公は殺されてしまう。
で、残った奥さんはどうするかというと、国へは帰らず、農業の傍らヒツジの繁殖?まで始める。
あくまでもこの土地に留まり続ける理由は、夫の遺体を探す事と、犯人である隣の兄弟の罪を暴く事だったんだろうけど、この奥さん役の女優さんがすごくイイんですよね。
美人ではないんだけど、すごくいい顔なさってる。夫と畑仕事してる時も、化粧っけもなく日焼けもしてるのに、とても美しく見える。そして夫が失踪した後は、その顔に凛々しさが加わって、彼女の顔や表情を見ているだけで退屈しませんでした。
ただ、この村ってなんで全然女がいないのでしょうか? あの兄弟が「女が出来ねー、結婚も出来ねー」とボヤく?シーンがありましたが、ヒロイン以外に出てきた女って兄弟のお母さんくらいで、あとは野郎ばっかりが毎晩酒場にたむろしてくだまいてるだけ。
そのあたりがちょっと不自然かなと。
最後はすごくモヤッとした終わり方で、果たして彼女の願いは叶うのかどうかもわからないままエンドロールになってしまいましたが、このモヤッと感というか、ハリウッドの大衆娯楽映画みたいに勧善懲悪でスカッと終わらないあたりが、名作と呼ばれる所以なんだろうなと思いました。
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