ももいろりんご

REVOLUTION+1のももいろりんごのレビュー・感想・評価

REVOLUTION+1(2022年製作の映画)
3.2
本作の監督である足立正生は、先週観た「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」で描かれていた故・若松孝二監督の盟友である。
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その映画の中で、若松さんが海外で潜伏中の足立さんと電話をしているシーンがある。この回線は盗聴されないから、って。
足立正生って、あの足立正生だったの⁉️
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(足立監督の話をこれ以上するとどんどん脱線するので説明は省略)
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本作で描かれるのは、安倍晋三元首相の暗殺犯、山上徹也容疑者。しかも2022年7月の事件をもとに、翌月の8月末クランクイン、ダイジェスト版を9月の国葬のタイミングで緊急上映、年末に完成版を劇場公開している。なんというスピード感。
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アップリンク吉祥寺の「気がかりな映画特集」にて鑑賞。足立監督と鈴木エイトさんのトーク付き。
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川上達也(タモト清嵐)は、幼少期の父親の自死をきっかけに人生が一変、兄が癌を患い後遺症で片目を失明すると、母は心の支えを求めて統一教会に入信する。以降、残された保険金や資産を教団に献金。底辺のような生活を余儀なくされる。母の自己破産、兄の自死、バラバラとなった自分と家族をここまで追い込んだものへの復讐心から、川上は部屋に閉じこもり改造拳銃を作り続ける…。
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重ねて書きますが、本作は事件の翌月には制作を開始している。まだ裁判も始まっていない。どこまでが本当でどこが創作なのかは曖昧ではある。
選挙期間中だったことから「民主主義への冒涜だ」みたいな記事が先行、でもすぐにそうではないらしい…とわかった時には、故人には申し訳ないが因果応報とも思ったし。
宗教二世、政治と宗教の癒着ぶりの波紋は今も揺れている。
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正直、映画は荒々しくほぼ主人公のモノローグ。映画の作りも、主人公・川上も、独りよがりな面は否めない。おもしろいとは言わない。思想を重ねるあたり、映画好きには受け入れられないかも。
けれど、その明確なメッセージとそれに至る背景、描き方に引き込まれた。イライラしながらドキドキしながら観た。
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テロか怨恨か、まだ世の中は大騒ぎの中、足立監督が描きたかったこと。それを伝える方法が映画だった。御年84歳。次回作をお待ちしております。