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マンティコア 怪物のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

マンティコア 怪物(2022年製作の映画)
4.3
【クリエイターのプライベート具現化空間は存在するのか?】
デヴィッド・クローネンバーグ『ステレオ/均衡の遺失』において、テレパシーがある世界では他者の思想が侵入するので本心は別の箱に収める世界を提示していた。今やコンピュータはまさしくそうである。クリエイターの脳内にある曖昧なものを具現化する物理的世界における表象としての絵、PCで描かれるクリーチャー。どちらも他者に見られる可能性がある。ある事件をきっかけに脳裏に浮かぶヴィジョンをいかに具現化して内なる渇望を癒すのか?

この一つのアイデアとしてVRが提示される。画に映し出されるのは、VRゴーグルをかけて創作する主人公。最終的に、具体的に、何をしているのかはゴーグルの外側から観察するしかない。脳裏に浮かぶ像を内なる空間で具現化し、自己処理をしていく彼を通じて。

さて、果たしてその聖域は安全なのだろうか?また、他者と肉体的に交わることで、互いに脳裏で曖昧に浮かぶ感情を突き合わせ親密な関係になることはできるのだろうか?VR論から、親密さや具現化することによる影響を模索する意欲作。このアイデアに私は夢中となった。
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