マインド亀

ハート・オブ・ストーンのマインド亀のレビュー・感想・評価

ハート・オブ・ストーン(2023年製作の映画)
3.0
ガル・ガドットなら女性ジェームズ・ボンドになり得たかも

●『ワンダーウーマン』でスカヨハと並ぶくらいのアクション俳優となったガル・ガドット(ガチのセロンは次元が違う(笑))。エキゾチックで圧倒的なチャーミングさと美しさ、そしてアクションの絵面がキマりまくるスタイルの良さで、スパイアクション映画に抜擢されるのは時間の問題でしたが、シリーズ化も約束された1作目がなんと劇場ではなくNetflixで公開しました。普段はNetflixの新作公開直後ほ触手が動かない(評判を知っときたい)のですが、そこはやはりガル力(がるりょく)!役者で観たいと思わせるのは流石。早速観てしまいました。

●幕開けではガルはMI6において情報サポート役の新人。なので車内から出ないことを約束されていました。なので、「あれ?今回は情報戦メイン?」と思っていたのですが当然そんなことはなく…
一つの山場が終わったあとのオープニング!これがまた完全に007を意識した作りとなっております。なのでシリーズ1作目としての気合い入りまくり!
衝撃ワクワクしましたね!新しいスパイムービーのフランチャイズが始まったと。女性スパイ物はあんまりシリーズないんですよね。で、今回はハートの9というコードネーム。もう、007のようにコードネームだけ残して、未来永劫役者を変えて作られるフランチャイズが始まったと完全に思いました。




ここからネタバレ















●今回のガルのスパイ戦の肝は、「ハート」という量子コンピュータを使って世界を完全掌握した、どこの国にも属さない、存在すら確認できない正義の諜報機関「チャーター」のバックアップなんです。
これがまた面白い。
『ミッション・インポッシブル デッドレコニング パート1』でも使われたようなスマートグラス(メガネに「ハート」から送られる情報が送られる)を通して観る空間コンピューティングで、ありとあらゆる可能性が演算されて、ガルの行動の選択をサポート。これが今までのスパイアクションにはまったくないガジェットで、「ハート」の予測経路などが現実空間上に全て表示されるんですね。
で、その「ハート」 を使ってサポートするチャーターでは、『アイアンマン』の人工知能「ジャービス」のように立体ビジョンを手で操作するタイプのコンピュータを駆使するんですが、これもSF感があってスパイ映画では新鮮。
雪山で敵を追いかけるガルをサポートするように、グラスに予測した確率と経路を映して、ガルがその選択肢を選んで進んでいくのがスゴイ楽しかったんです。
これは新しい!と。
そしてこのガジェットを使えば、「ハート」が導き出した確率とガルの本能との葛藤や、「ハート」の裏をかいた心理戦など、いくらでも面白い脚本が作れる!と。


で、す、が、


●中盤にいきなりその「ハート」が奪われ「チャーター」本部も壊滅のピンチに……

え?もうあの面白いの、出ないの?
と思ってたら、そこからあれよあれよと、わりと見たことのあるようなアクションムービーに……

いやこれもったいない!もったいなさすぎる!

この「ハート」の設定を使って何本でもシリーズ作れるやん!
ほんで「ハート」奪われて本部壊滅させられるのって、ドラマシリーズならシーズン2の最終話くらいのやつやん!?
007ならシリーズ1作目がスカイフォールみたいなもんやん!?
いきなりこの作品の特色を打ち消して、体一つでぶつかっていくアクション、って、それは正直見飽きた…

いや、一つ一つはすごいんですよ色々と。でもまあ『ミッションインポッシブル』でのトムのノースタントアクションとかを見てしまうともの足りなくなってしまったんですよね…
なのでこの作品の変化球の魅せ方として、「量子コンピュータ」のサポートというのは新しいと思ったんですが…

●あとは、物語運びはだいたい予想がつく感じで収束。丁寧に伏線をはっていくし、だいたいキャラクターの顔つきや役者のランクを観れば定型的な物語上の役割が想像できるというか…なので中盤以降は物語的に新鮮なものは何もなかったです。
いや~もったいない!もったいなさ過ぎる…もっと007のようなシリーズに加えた特色として「ハート」をもっと活用してほしかった、と思いました。

●ビルの破壊シーンはよかったです。ちゃんと巻きこまれる一般市民なども映っていたし、リアルでした。(同じNetflixの大型アクション『タイラーレイク2』は、全く人が映らないビル破壊がファンタジーっぽかったので…)

●あと、「ハート」を奪い返してからすぐに時間が飛んでラストになりましたが、敵の組織の人たちはどうなったんでしょうか…全員何らかの力で逮捕とか処刑とかされたんでしょうか…

●というわけですが、ワンダーウーマンを観てガルの大活躍を楽しみたい人にはめちゃくちゃ楽しめる映画ですし、普通に大作アクションとして楽しめます。が、やはり映画館で観たかったというのが一つと、やっぱり独自性を殺しちゃったのがなんともなあ、という作品でした!
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