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エリザベート 1878のきのレビュー・感想・評価

エリザベート 1878(2022年製作の映画)
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大傑作。「マリー・アントワネット」、「スペンサー」や「ミス・マルクス」の系譜だね。美の“象徴”であることのみ求められてきたシシィが、そこに息詰まりを感じて解放されるまで。現代的な視点からシシィという人物を解体・再構築する過程は、時代考証のうえでの“シシィ”よりもヴィッキー・クリープスに委ねられていて、“象徴”を拒絶して中指をたてるすがたは、シシィ=ヴィッキーに重なり、最高に切れていて大好きだった。と同時に、息づまりを感じながらも、若きころから“美”としてたたえられてきた彼女が簡単に“美”を捨てられるわけではなく、外見的な美しさを保とうと意地になったり、不思議の国のアリスよろしく、縮んだ部屋で大女として佇む姿にそこしれぬ孤独を感じてしまい、ひとりの人間の広大な宇宙に夢中になる。この“シシィ”のこと、大好きだ。どこにいっても属せない、だれからも愛されない恐怖とか。カミーユの音楽が大好きだった。
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