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猿の惑星/キングダムのnetfilmsのレビュー・感想・評価

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
3.7
 完全新作ということでワクワクしながら観に行ったのだが、率直に言ってかなり微妙に見えた。何と言うか『ゴジラxコング 新たなる帝国』の時も思ったのだが、動物の擬人化と進化したVFXの融合は金をかければかけるほどゴージャスな見栄えに見えるのだが、肝心要の脚本上の構成や物語設定の拡張部分に何の新しさもなく、全てが想定内であぁそうだよねという当たり前の感慨しか浮かんでこない。コーネリアスが活躍したオリジナル版、そしてティム・バートンが監督を務め、不名誉にもラジー賞に輝いた『PLANET OF THE APES/猿の惑星』ももちろん観ているし、今作の重要なフックになるシーザー版のトリロジーも観ているが、もはや猿と人間との力関係の逆転で新しい物語を作るのは難しい。というか今作が300年後という未来の世界を舞台にしているにも関わらず、出て来るのは自然豊かな森や海ばかりで、要は300年後の世界をビジュアルで描くことが出来ないことも停滞に拍車を掛けているように見える。

 それは20世紀フォックス社がディズニーに買収された余波も思いの外大きい。トンネルの向こうには行ってはならぬという子供たちと両親との約束の主題がもう思いっきりディズニーのフィロソフィー内だし、ノアはエコーの向こう側の世界=ここではないどこかに思いを馳せる。今作の前半部分の展開は思いっきり西部劇なのだが、「猿は猿を殺さない」という今シリーズの最も重要なアイデアが最初から破られることに違和感を禁じ得ない。イーグルの産卵期に卵を持ちながら、五穀豊穣を祝う儀式の途中で仮面を被った別の種族の襲撃に遭うことと、人間の女性が食べ物を盗みに来ることとが並行して起こる辺りが何とも西部劇的で、ノアの冒険譚的復讐劇というか、人間側のノヴァ(フレイヤ・アーラン)との触れ合いが『ゴジラxコング 新たなる帝国』で言うところのゴジラと少女の触れ合いになるのだろうが、ノヴァ自体がそもそも少女ではないし、純粋無垢というよりは人間が言葉を取り戻すために政治的に奮闘するのだが、そのフックとして生じた失語症のエピソードも前半の何もかもが私には蛇足に思えた。ノアのメンターになり得るやも知れぬと思ったオランウータンのラカの途中退場も、次作への伏線なのだろうがそれにしても見せ場が少なく、ノアだけの孤軍奮闘に終始する。言葉が話せるにも関わらず、ウホウホ言っていたり、動物の擬人化は一歩間違えばコントにもなり兼ねないとかつて書いたが、アメリカ人の考える人間批判や文明批判は極めて大味で、かつてのオリジナルのような崇高な視座もなく、終わってみれば単なる動物アクション活劇じゃないかと真顔で呟く人も多いのではないか。
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