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アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~のnanatenのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

当時から10年間ずっとアイカツ!が大好きな者です。つまり厄介オタクなのかもしれない、私はこの映画を「エモい」とは思ったけど「楽しい」と思いきれなかった。

初見が無声応援上映会だったのが良くなかったかもしれない。あまり身なりに気を遣っていない男性オタクたちのペンライトやよく分からないタイミングでの拍手に囲まれたことで穿って観てしまったのか、少し「あざとさ」を感じてしまった。

「あざとさ」というのは、10年前少女だった女性達にも、あるいは途中で獲得した層にも満遍なく刺さるように設計されてるような欲張り感のある、現実世界への寄り添い方。ビジネスだから当たり前ではあるものの、アニメ時のようなコンセプトの一貫性がないような気がしてしんどかった。あくまで個人的な感じ方だけれど。

特に、私は展開の仕方とキャラクターの行動原理からそれを感じた。

展開の仕方は、グッズやストーリーで1 seasonの内容がすごく強調されていることが疑問だった。初期メンバーが集まっているとはいえ、星宮いちごの成長の描写で、高校卒業を前にして中2の記憶ばかり流れるのは不自然だと思う。「崖登り」と「クリスマスの斧」の回をクリエイター達がすごく大事に思っている、またはファンに刺さると思っているのはわかるが、「思い出は未来の中に」がただの言葉遊びになっているようで悲しい。

私はアイカツ!、ひいては主人公星宮いちごちゃんの魅力を、新しいことにがむしゃらに走っていく中で、少し立ち止まるような大切で感動的な言葉が生まれることだと感じていて、そのバランスが好きだった。
それは、脚本の話だけではなくて、 3DCGの変化や楽曲の幅などから伝わる、クリエイター達の常にクオリティを求めて新しく進化していく姿勢も子供ながらに好きで、それに憧れていた。私情だけど、私自身の進路にも影響している。

なので、内輪ネタや伝統をやらないでとは言わないけど、その分新しさを見せてほしかった。
もちろん、卒業記念ライブが始まるという予想を裏切り紫吹蘭の大人姿が出てきたシーンや、そして卒業ライブも見れるんだ!とわかった時の高揚感など、新しく感じた所もあったけど、割合は負けていた。懐かしさやノスタルジーを前面に押し出すにしても、その方法が私にはあざとく感じられた。
ノスタルジーをやるならこそ、キャラクターデザインを刷新した理由もわからなくなってしまう。やぐち様の今の絵はほかアニメでは普通に好きだけど、ライブシーンは10年前のデザインに寄っていることも含め、ノスタルジーというコンセプトとは不一致だと思う。クリエイター陣が身内化してるのかもしれないなと感じさせられた。
前半に夏映画の同時上映と全く同じものを使用する、それを夏時点では公表していないということも、ファンとしては何度も観れて嬉しいものの、クリエイターのファンとしては残念に思った。

キャラクターそれぞれの行動原理については、キャラクターによって差があったけれど、彼女達の「らしさ」を現実世界に寄り添ったものとして拡張しないでほしかったという意味。

蘭ちゃんはとても「生きていた」と思うし、彼女推しとしてはそのことがとても嬉しい。車を運転していたシーンで一番テンションが上がった。モデルからお芝居に進むのは芸能界で生き続ける彼女の決意を感じるし、真面目故に固くなってしまうところ、同じシーンの演技を繰り返して練習する姿は、歳を重ねても彼女のままだった。
また、幼い頃は女装もしていた星宮らいちが、ちゃんとお父さんにも似た好青年になっていることはリアルだったし感動した。

あおいちゃんに関しては、まず4年間ユニットを休止するという選択を彼女が積極的に選んだことに首を傾げた。アイドル業界の厳しさ、そして移り変わりの早さに一番敏感なのが彼女だと思っていた。柔軟性のある彼女が、どうしても大学時代で渡米しないと行けないと思った理由は作中では描かれていなくて、彼女の意思なのか、クリエイター達が無印50話を繰り返したいだけなのかわからなかった。後者だとしたら悲しい。ソレイユを仲良しユニットとしてあればいいってことなら別だけど、125話で語った夢をもっと真剣に見つめてると思ってた。トップユニットとしての地位は揺らいでしまうと思う。
一方で、イメージが変わりにくい留学中に髪を切るのは人間らしい変化だと思った。

いちごちゃんは主人公だからアイカツ!のストーリー自体の顔になることは今回ばかりではないけれど。大人しめの今作では、彼女が大人しかったのが私は寂しかった。成長による「大人っぽい」というよりは、前述のノスタルジー、エモーショナルな展開のための「大人しい」に感じた。彼女の長所にはとりあえず走り出すことが大きくあると思っていたので、目標の言語化ができるという長所の方が沢山フューチャーされた今作では、あまりアクティブな彼女が観れなかった。キャラクターデザインも一人だけ変化ではなく「減らしただけ」で、魅力が目減りして見えた。
そしていちばん違和感があったのはユリカ様で、アイドルとしての「ユリカ様」だけが成長した大人姿に見えた。根に「ユリカちゃん」がいる感じがなくなっていた。(特に現実男性)ファン受けの良い未来像として描かれていたように思う。劇中では彼女は女性ファンも多い描写だし、ストイックなイメージなんだけどな。スキャンダルはもう懲り懲りなはずだけど、らいちとの噂が立ちそうなのも心配。
神崎美月の「こんなものなの?!」も、現実世界の私たちには面白くても、彼女としては真剣に言った事だし、あそこにいるファンも面白くないと思う。(演者さんのパフォーマンスは現実に向けたものだから素敵だと思うし楽しいけど、)公式の脚本ではネタにして欲しくなかった。

そういう意味で、EDムービーは素晴らしく、モヤモヤしながら視聴した初見の時でもぼろぼろ泣いてしまった。
あの日の続きのように、新しいアイカツが生まれていたのが印象的だった。


2/19日 LIVE前に2回目に観て、特別な視聴方法でもなかったので以前よりもかなり素直に見れた。感じた残念感は変わってないけれど、ずっと支えて貰ってありがとうという気持ちも変わらない。今回の企画で綺麗に幕が閉じるのかと思うと寂しいけれど、追い続けて見届けられて良かった。逆に、無印1seasonに関する展開はここでちゃんと終わってほしい。
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