一分一秒 見逃したくないと思わせてくれる繊細さが最後まで続く映画だった。
目の視えない主人公・西村のあまりの生の存在感ゆえ、
映画を観ながらもはばからずふと目を閉じてみる瞬間が幾度かあった。
劇中の些細な物音、そして寺西涼さんの音楽が胸にぐっと近く迫ってきた。
人間はどうしたって視覚優位だと言うけれど、確かにまず目でとらえてしまう。
明け方に向かう頃の海の静謐な音。
お弁当の最後の米粒をかき集める音…。
もっと私も耳や鼻や心で捉えたものを大事にしてみたい。
言葉を選ばずに言うと、目の見えない主人公・西村にどこか羨ましさすら覚えた。
木村知貴さんの演じられた西村の佇まいがあまりにも魅力的でずっと目を話したくない存在だった。
寺西涼さんの音楽。穏やかに、しかしヒリヒリと感情を揺さぶられ、息を飲んだ瞬間が幾度もあった。
題字を書かれた道田里羽さん。主人公・西村の揺れ動く気持ちを書に込め、また、公開劇場が決まってからこちらの題字を書かれたとアフタートークでおっしゃっていた。
この『はこぶね』という作品からいただいた生きていく力と繊細さを真っ直ぐに感じさせていただいた書でした。
『はこぶね』のおかげで、もっともっと。もっと映画というものを好きになった。
出会わせていただき、かけがえのないものを目にしたなと思わせてもらえる映画。