スガワラ

石があるのスガワラのレビュー・感想・評価

石がある(2022年製作の映画)
3.7
これまで映画、いや芸術作品において示されるものは何かしらの意味があると考えていた。あらゆる挙動やカメラワーク、そうしたものに囚われた見方をし始めるようになってから楽しさみたいなものが薄れつつあった。まずはこの楽しさを復活させねばならぬ。
この映画は生活から解放する。王舟による愛くるしさと幻想性が両立するようなサウンドトラックが私を異空間ではなく、大人のままタイムマシンのように過去へと引き戻した。映画の中で出てくる石や枝に象徴的な意味などなく、無意味であることのみが存在する。無意味から考えられることなど、これまであっただろうか。

激しいアクションやラブストーリーといった非現実にも憧れる。嫌いとは言い切れない別の面白さがある。加えて私は目の前のものに新しさを覚えて感性が刺激される、そんな空間へと回帰することもまたフィクションのなしうる力である気がしている。「石がある」は日常を非日常化する無意味さを与えてくれる映画であった。
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