Omizu

同じ下着を着るふたりの女のOmizuのレビュー・感想・評価

同じ下着を着るふたりの女(2021年製作の映画)
3.9
東京フィルメックス コンペティション部門

卒業制作にも関わらず釜山、ベルリンなどの有名映画祭で上映された作品。愛憎入り交じる母娘の関係を時にシリアスに、時にユーモラスに描いた秀作。

慎重に「母性」という安易な着地を避け、非常に洗練された映像と演出で描き出す手腕は手練れの領域。これが長編デビュー作とはちょっと信じられない。Q&Aに登場した監督は本当に若くて可愛らしい声で驚愕。『夏時間』ユン・ダンビ、『はちどり』キム・ボラなど韓国の若い才能登場率とその打率には驚くばかり。

じっくりと複雑な母娘関係を描き出す丁寧な描写は素晴らしい。おそらく母親も虐待されたのだろう。マッサージ店でお客の吐く愚痴や疲れは母親にたまり、家でくらい小言や八つ当たりは許してよ、と言う。そこで娘は「じゃあ私はどうしたらいいの?」と言う。

娘は同僚女性の家に転がり込み話をする。しかしその同僚女性も会社に来なくなってしまう。思い返すと娘は同僚女性に一方的に話をしていた。母親と同じ事をしていたのだ。

赤を印象的に使った色彩、自然なユーモアは非常にセンスがいい。

ただ、人間の嫌なところを煮詰めたようなイヤ~な描写が140分続くのでけっこうキツい。正直140分は長すぎると感じた。終盤は間延びして感じられた。リコーダーのシーン、停電のシーンはいいんだけど、ちょっと狙いすぎているような…

でも終わりよければすべてよし、ということで結末は見事でした。繰り返すけど長編デビュー作とは思えない、末恐ろしい才能ですねこれは。
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