このレビューはネタバレを含みます
東京フィルメックスにて。
「殺してやる」が口癖で、事あるごとに暴力をふるう母親と、そんな母親を憎みながらも愛情を求めてしまうアラサー娘の機能不全に陥った壮絶な親子関係を描いたドラマ。
観ていて辛くなるシーンばかりだが、母親の真意や父親の不在についてなど充分な余白を残し、その深層を想像する面白さも兼ね備えていて引き込まれた。
多様な生き方と人を幻惑させる欲望が溢れる現代ではこのような親子も珍しくはないのかも知れず、映画の中の強烈なキャラクターとしてではなく、実在する人間としての血肉と感情の宿りに俳優陣の執念と監督のセンスを感じた。
これが長編デビュー作だというキム・セイン監督。Q&Aでお見掛けしたら、まだ若くて溌剌とした女性であり、黯然たる作品とのギャップが印象的だった。
今後も注目していこうと思った。