べし酒

NOCEBO/ノセボのべし酒のレビュー・感想・評価

NOCEBO/ノセボ(2022年製作の映画)
4.0
鑑賞後に調べたら「ラナプラザ崩壊」という、西洋アパレルによる途上国の労働搾取関連での大規模な事故が直ぐに検索できたので、そこがまあテーマ的にはあるのだろうとは思うのだが。

監督が『ビバリウム』の人、ということは正直忘れていたけど、エバ・グリーンさんにマーク・ストロングさんという配置から、精神的イヤミスっぽい感じかなと。
しかし割と冒頭から、デキモノ犬と妙な虫みたいな煽りにオヤ?となる。

とは言えダイアナ登場からはやはりエバさん演じるクリスティーンの神経が揺さぶられるのかと思ったら、冒頭で受けた電話の話がどうやら彼女の神経を蝕んでるらしいと。

初めは娘が亡くなったかと思ったら普通に元気でいて、では旦那なのかと思ったらそれも違って、という構成の仕方は明らかに意識的なのかなと。

ダイアナが悪意を持ちクリスティーンに接近してること、犬や虫と関係していることは直ぐに示されるので、彼女の恨みが冒頭の電話の件と関連していることは早めに分かり、その過去の謎とどういう復讐になるのかという部分に興が湧く。

この映画で面白いと思ったのは、テーマ的な必然だけれどアジア系のダイアナの全受容菩薩なのか根本何考えてるのか分からないアルカイックスマイルの不気味さを活かしながら、その土着呪術的復讐譚をアジア系映画テイストしっかり盛り込んで構成しているところかな。

大体この手の映画だと主人公が心を入れ替えて許されるのが常道だけど、神を人の絶対上位ではなく人の情念によって悪神にも善神にもなるという風に描き、更にその復讐が最後までしっかりと実行完結されるのがなんかアジア映画的な感じがしましたよ。
虫や焦げ人のホラー映像畳みかけ部分はもうジャンル映画のソレじゃんとしか(笑)

最後、ダイアナがクリスティーンの娘ちゃんボブスに約束したことをそういう形で実行するとは思っていなくて、ここはダイアナの本来の善性と復讐心が相混じった選択でもあるのかなと思いました。ここがあって鑑賞後感がめちゃ良くなりました。
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