Anzucco

最悪な子どもたちのAnzuccoのレビュー・感想・評価

最悪な子どもたち(2022年製作の映画)
4.7
フランス北部の荒廃した地区の素人の子どもたちを起用した映画を作る、過程を撮った映画なのかなと思い見ていると、それが子どもたちを描いたフィクションと現実が入り混じったものだと気づき始める。問題のある家庭に育ち、社会の端に追いやられた子たちを現実とクロスしたフィクションの世界で子どもたちが輝き出す瞬間瞬間を目の当たりにしてその眩しさに射抜かれる思いした、が、一方で映画制作を名目に子どもたちやその地域から搾取しているのでは?という倫理観も問われる。映画だからといって子どもをけしかけるような演出をしていいのか?とか地域を貶める内容になるのでは?と見ている側にゆさぶりをかけてくる。
あまりにがつんときて上映後の監督のアフタートークを見たのだけど、なるほどと納得した。素人の子どもたちは養護施設や学校でオーディションし、ある面では彼ら彼女らの人生とリンクするような演技をつけているが、すべてのセリフはアドリブなしにフィックスされ何が起こるかわからない不安を抱かせないようになっている。そして見てわかる通り作品内でも大人が子どもを消費しない、性的に未熟な子どもをケアするといったシーンをさし挟んでいる。さらにこの世界に迎えた以上その後の人生にも関わりを持ち、演技の世界に入りたい子のサポートもしたそう。やはりと思ったのは映画内で強烈な光を放っていたリリ役の女の子はその後俳優として着実にキャリアを重ねつつあるとのこと。ライアンの最後のセリフがこの映画全体を表すのでしょう。
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