モロッコの路地裏にあるカフタンドレスの仕立て屋
世代を超えてもなお受け継がれ、伝統を守ってきたけれど
ひとつひとつ丹精込めて作っているから時間がかかる
丁寧に、大切に作りたいハリムの気持ちをよそに求められるのは早くて安いドレス
複雑な気持ちをいちばんに理解し、支えてくれていたのは妻のミナだった
決して裕福ではないけれど、時に冗談混じりにふたりで笑える瞬間にしあわせを感じる日々
ある日やってきた若い職人のユーセフとカフタン作りを経て絆を紡いでいくが
病を抱えるミナの残された時間はわずか
きっとふたりにしかわからない、同じ気持ちを抱えているであろうユーセフとハリム
ミナは頼りになる存在だけれど、強く振る舞わなければ自分を保てなかったのかも、とも思った
3人の視線が印象的
夫婦の愛もあれば、同性愛もある
セクシャリティは違えどたしかに妻への愛もあって年下の彼への気持ちもある
その狭間で揺れる葛藤に苦しみながら時に厳しく、でも優しい
前作のモロッコ、彼女たちの朝ではタブーとされている妊娠した未婚女性の話がテーマだったけれど、今作の同性愛もイスラム社会ではタブー
自分を隠して生きていくしかない。
そして、古き良き伝統を守らなければいけない中、自分たちらしく妻の最期を見送る姿には希望が見えた
