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薔薇の名前のitのレビュー・感想・評価

薔薇の名前(1986年製作の映画)
3.9
追悼ショーン・コネリー
『007』ボンドという圧倒的キャラはさておき、俳優としてのショーン・コネリーの名演!といえばやっぱりこれ。バスカヴィルのウィリアム。

映画化不可能と思われていたウンベルト・エーコの高尚かつ膨大な原作を、エンタメ・ミステリーとしてまとめあげた異色の名画。ホラーではない、中世の闇の不気味さが、じっとりとした時間の流れの中で描写されている。

「はじめに言葉ありき」という冒頭の、聖書の引用から、(薔薇は)名前があるから存在するのか、具体的なものがあるから存在するのか?という観念VS実存との普遍論争をテーマにした本作。今ではただの哲学論争に思われるが、中世では絶対的真理をめぐる生き死ににかかわる戦いだったんだな。

弟子役アドソのクリスチャン・スレーターとのバディ・ムービーという意味でも、シャーロキアンにも響くミステリーとしても、味わい深い。
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