デニロ

To Leslie トゥ・レスリーのデニロのレビュー・感想・評価

To Leslie トゥ・レスリー(2022年製作の映画)
3.0
予告篇。主演女優の、圧巻の演技でハリウッドを席捲!!、という惹句に釣られて。

何十年前の時代設定なのかよくわからないけれど。宝くじで19万ドルをせしめた主人公が6年後にはその金をすべて使い果たして、ただのアルコール依存症になっている。そして、その間にひとり息子を育児放棄していて、知人がその息子の面倒をみていた。町の人間からも疎んじられ、そんな状態なので家賃も払えなくなって追い出される。待ってよ待ってよ、この人でなし、ねえ、一晩分のお金貸してよ、と悪態を吐いたり、甘えてみたり。誰にも相手にされず頼みは疎遠になっていた息子に縋ること。ボロボロになった息子の連絡先を手に息子の元へ。

イヤだけど母親ですもの頼られたら仕方ありません。母親の好物が雲吞だってことも忘れちゃいません。子どもはお母さんが大好き。どんなに虐待されたってお母さんから離れたくないんです。そんなニュースが流れると母親って何なんだと思う。さて、しばらくのつもりで置いてあげることにしたのですが。部屋を物色して金を盗むや否やルンルン気分で酒を買い込んではしゃぎまわるわ、使い切ると息子のルームメイトの部屋に忍び込んで金を盗み出すわ。アパートの隣人の部屋に転がり込んで、と。もはや我慢できません。かつてネグレクトされていた自分を面倒見てくれた夫婦に泣いて母親のことを頼み込み、旅立たせます。

因縁深いその夫婦とうまくいくわけもなくそこも追い出されて・・・。そののち、奇特なモーテルの管理人に拾われて仕事と部屋を与えられて再生するという話でもなく、前借や給料は酒に消えていくのです。こんな話。不快で、ちっとも面白くありません。その不快さを醸し出す圧巻の演技というんでしょうか。

その管理人。役名をスウィニー。何か目的があって彼女を雇い入れたわけでもないようでよくわからぬのです。濡れそぼって小さくなったボロボロの猫を保護した感じでしょうか。猫ですから呼んでも来ません。酒浸りの彼女に優しくもないけれど規律だけは正そうと懸命なんですけど。ある意味神様。彼もその昔は結婚していた時代があって、その相手方はアルコール依存症となり、って全般的に平板な物語なんですが、更にその奥さん、教会に通うことでアルコール依存からは抜け出せたのですが牧師さんと恋仲になってしまってスウィーニーからも抜け出してしまう。成功体験と失敗を同時に経験した強みでしょうか、かなり我慢づよい男。彼女がダイナーをやろうとすると資本の心配しながら計画を立てますが、なんか理解できない計画だった。そして突然愛を告ったりして映画全体をさらっていきます。

去年観た『WANDA ワンダ』とは似て非なる物語。やはり『WANDA ワンダ』は孤高の作品。屹立している。
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