デニロ

ジョン・レノン 失われた週末のデニロのレビュー・感想・評価

3.0
語り部のメイ・パンが、ヨーコに命じられてジョンと付き合うようになったと言っているけれど、なんのこっちゃ。ということはジョンの配偶者公認なんだから不倫、浮気っていうカテゴリーには入らんのじゃなかろうか。尤も計算が狂って、ジョンがなかなか戻ってこない状況に怒り狂った後のヨーコの所業はなかなかに悪魔的だ。

そもそもヨーコが何故にジョンと付き合えと命じたのがよく分からぬので、勝手に想像するとまだまだ若い30代前半のジョンが7歳年長のヨーコに倦怠感を覚えていた、ということではなかろうか。彼女、鹿爪らしい表情で面白くなさそう。あてがわれたメイは若々しくあっけらかんと明るそうだし、ヨーコがいいって言っているんだから楽しもうと。恋にタブーなどあるものかい!

で、元の鞘に戻るときがまた凄まじい。エルトン・ジョンだったかのライブのステージに飛び入りして共演。その楽屋で久しぶりにヨーコとご対面。メイの語った細かなやり取りは忘れたけれど、ヨーコが許してくれたと一時的にジョンはヨーコの元に戻るという。でも、メイの下には戻ってこない。ヨーコに電話して、ジョンは歯医者の予約を忘れると混乱するのとかなんとか言って歯科医でジョンを待つ。やってきたジョンと家に帰ろうとするとジョンはあらぬ方に向かおうとする。どこに行くの?家に帰るんだ。家はこっちよ。死んだような目をしたジョンはそのままあらぬ方に向かって帰っていく。

犬も食わぬというものを見せつけられているだけで、これと言った情報はありません。ビートルズのファンだったら読み聞き見たりしているような情報なのでしょう。70年には活動を停止していたザ・ビートルズの現役時代を臨場感を持って耳にしていたのはほんの短い間だった。それでもその後耳にした数々の曲がレノン=マッカートニーであることに驚愕したのも事実だ。バラバラになってからソロの活動を始めて楽曲を発表していたけれど、ポールはポップな楽曲が多くて、というのか、そこで歌われていた歌詞にジョンに対する当てこすりがあって、ジョンにとってみたらそんなポップな駄曲で俺のことを言うんじゃねえ、とばかりに有名な一撃を加える。/The only thing you’ve done was yesterday/And since you’ve gone you just another day/(How Do You Sleep ?/ John Lennon)

そんなふたりも本作の頃には会って行き来をしている。ザ・ビートルズの法的な解散のためだ。その辺りのことはマーク・ハーツガード著「ビートルズ」でも知ることができる。

何かに依存していなければ生きられないミュージシャンもいればそれとは無縁なミュージシャンもいる。本作を観ていると、ジョンはミミおばさんに始まっていつも誰かに何かに依存して生きていたかのようだ。

Double Fantasyに生きていたのでしょうか。
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