8Niagara8

ナイン・マンスの8Niagara8のレビュー・感想・評価

ナイン・マンス(1976年製作の映画)
4.2
愛を描きながら、延々と不安定なまま展開していく。

ユリは逞しく、意志も強い。
ヤーノシュの直情的で、幼稚で強硬な態度。思いつきでの言動。これは全編通じ変わらない。彼の気持ちも分からなくはないし、実に人間くさい。とはいえ、この作品においては彼には批判的な視点が与えられている。
コントラストのはっきりした二人である。
価値観は明らかに違っている。それでも人間の間には愛が生まれ得る。
二人を映すカットはとても美しく、その現実性は別として愛の存在を語る。

ユリの自由意志はその強さとは裏腹にやり場のないものでもある。
家庭や家族といった価値観、結婚、妊娠、育児…といったライフイベントが女性にとって残酷さを持ち合わせている側面。
男性や固定化された社会構造がもたらす価値観がいかに刺々しいものか。
半世紀を経ても説得力があることが残念とも言える。

最後の出産シーンはあまりにショッキング。このあと彼女が直面するであろう現実を想起させるに雄弁なカット。
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